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GEAR — 2026.08.24 — 9 MIN READ

焦点距離別ポートレートレンズの選び方——35mm・50mm・85mm

TEXT — THE PORTRAIT EDITORIAL

焦点距離別ポートレートレンズの選び方——35mm・50mm・85mm

ポートレート用のレンズを調べると「85mmが定番」「50mmは万能」といった言葉が並びます。ただ、なぜそうなのかまで説明されていることは多くありません。

結論から言えば、焦点距離によって顔の写り方が変わるのは、好みの問題ではなく幾何学の問題です。理屈が分かると、自分の撮りたい写真からレンズを逆算できるようになります。

なぜ焦点距離で顔が変わるのか

先に、よくある誤解を解いておきます。

「広角レンズは顔が歪む」というのは、正確ではありません。 歪ませているのはレンズではなく、被写体との距離です。

同じ大きさに人物を写そうとすると、広角レンズでは近づく必要があり、望遠レンズでは離れる必要があります。近づけば、カメラに近い鼻とカメラから遠い耳の距離の比が大きくなり、鼻が大きく写る。離れれば比が小さくなり、顔は平坦に整う。

つまり顔の印象を決めているのは撮影距離であって、レンズそのものではありません。焦点距離は「その距離に立つことを強制する道具」だと考えると腑に落ちます。

35mm——空間ごと写す

被写体だけでなく、その人がいる場所を一緒に写したいときの焦点距離です。

  • 背景が広く入るため、状況や空気感が伝わる
  • 寄れば大胆にデフォルメでき、動きのある画になる
  • 室内など、下がれない場所でも全身が入る

一方で、顔だけを大きく撮ろうと近づくと、鼻が大きく顎が細く写ります。顔のアップには向きません。 環境ポートレートやスナップ寄りのポートレートで本領を発揮します。

背景をぼかす力は控えめなので、背景の整理は自分でする必要があります。

50mm——最初の一本にちょうどいい

人間の視野に近い自然な写り方をする焦点距離です。

  • 上半身から全身まで、一本で幅広くこなせる
  • 広角ほど誇張せず、望遠ほど窮屈にならない中間
  • 明るい単焦点が各社で安価に手に入る

最初の一本として最も潰しが効きます。 特に室内では、85mmだと下がりきれず使えない場面が多いため、50mmの汎用性が生きます。

弱点は、良くも悪くも「普通」なこと。狙って作らないと平凡な画になりがちです。

85mm——ポートレートの王道

顔をきれいに写すことに関しては、これが定番とされる理由がはっきりあります。

  • 適度に離れて撮るため、顔の各部の比率が自然に整う
  • 背景が大きくぼけ、人物が浮き立つ
  • 背景の写る範囲が狭く、余計なものを排除しやすい

背景処理が楽になる点は見逃せません。望遠になるほど画角が狭くなり、写り込む背景の量が減るため、街中でも背景を選びやすくなります。

弱点は距離です。上半身を撮るのに3m前後、全身なら5m以上必要になることも。日本の一般的な室内では、下がりきれずに使えないことがあります。

室内で使うときの落とし穴

ここが最も実務的な注意点です。

焦点距離が長くなるほど、同じ構図を得るために必要な撮影距離は伸びます。目安として、上半身のカットを撮る場合の距離感はこうなります。

  • 35mm — 1m前後。狭い部屋でも問題ない
  • 50mm — 1.5〜2m。一般的な部屋なら足りる
  • 85mm — 2.5〜3m。部屋によっては壁に背中がつく
  • 135mm — 4m以上。スタジオでないと厳しい

「85mmを買ったのに家で使えない」という失敗は本当に多いです。撮影場所の広さを先に測っておくことをおすすめします。

奥行きのあるスタジオであれば、この制約から解放されます。85mmや135mmの真価は、下がれる場所でこそ出ます。

単焦点かズームか

ズームレンズ(24-70mmや70-200mmなど)は、焦点距離を変えられるぶん現場での自由度が高く、仕事では主力になります。

それでもポートレートで単焦点が勧められるのは、次の理由からです。

  • 明るい(F1.4〜F1.8)ため、背景を大きくぼかせる
  • 同価格帯ならズームより描写が良い傾向がある
  • 焦点距離が固定されるため、自分が動いて構図を作る癖がつく

三つ目が地味に大きい。ズームだと立ち位置を変えずに画角だけ変えてしまい、距離による表現の違いを体で覚えにくくなります。

結局、何から買うべきか

用途から逆算すると、迷いが減ります。

  • 室内や自宅で撮ることが多い → 50mm、または35mm
  • 屋外で人物を大きく撮りたい → 85mm
  • その人のいる場所ごと写したい → 35mm
  • スタジオを借りて撮る → 85mm(下がれる環境が前提)
  • 一本しか買わない → 50mm

50mmと85mmで具体的に迷っている方は、最初の単焦点、50mmか85mmかで二択に絞って掘り下げています。

まとめ

  • 顔の写り方を決めるのはレンズではなく撮影距離
  • 35mmは空間ごと、50mmは万能、85mmは顔をきれいに
  • 焦点距離が長いほど必要な距離が伸びる。室内では85mmが使えないことも
  • 単焦点は「自分が動く」癖がつく点でも初心者向き
  • 一本目に迷ったら50mm

レンズの性格は、同じ被写体を同じ大きさで撮り比べると一発で理解できます。奥行きのある場所で35mm・50mm・85mmを続けて試せば、数字の意味が体に入ります。白ホリスタジオでのポートレート撮影術もあわせてどうぞ。

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